ストローク戦のポジション解説 その1
シングルスのストロークのラリーについて、基本的なポジションを説明します。プロの試合でなぜ中心よりずれた位置に立っているのか理解できない人、自分でプレーしていてだんだん追い込まれてしまう人、ボールをやっと取る場面が多くミスをしてしまう人は参考にしてください。正しいポジションを取ることは、左右どちらに打たれても体制を崩されずにラリーの状況を悪化させないための前提です。
結論:
上図は、右側のプレーヤーが打つボールの位置によって、左側プレーヤーのポジションを上から見た図です。このようにセンターにボールがある以外は少しクロス寄りに立ちます。
理由:
状況の説明:
上図のポジションについては、ボールの数字とプレーヤー(三角形)の数字が対応しています。今回はラリーが50:50(neutral)の状況について、説明します。相手選手がボールのバウンドの高さがネットより10センチほど低い位置から打ち込んでくるシーンを想像してみてください。
まず相手選手が[1]の位置から打つ場面について、つまり相手選手が右利きならばフォアハンドで打つ場合に、なぜセンターマークより少し対角線側つまり相手から見て左側に立つかについて説明します。
おもな理由:
- ストレートに打つことは、クロスに打つよりベースラインまでの距離が短いためスピードが出せないのでスピードが出る方に少し移動するから。
- クロスとストレートでは通過するネットの高さが10cmほどクロスの方が低いため打ち易い。
- 打つ人から見て少し右にボールが外れるとアウトになるため、サイドアウトのリスクが高いためケアする割合が低いから。
- クロスのボールは自分から遠ざかっていく角度を持っているためできるだけ近くに追いつかなくてならない。
- クロスに打つ場合、ストレートに打つ距離感で打てばクロス側コーナーより鋭角に打てるから
- クロスに返球する方が距離が長いので時間を作り易く、その間にポジションに戻りやすいから
これらを総合するとおよそですが、ピンク色のプレーヤーの位置がポジションとなります。50:50(neutral)で進むラリー戦ではほとんどの場面でこのポジションに立ちましょう。
補足:
フォアハンド側で説明しましたが、フォアハンドのほうがバックハンドよりヘッドスピードが高いためストレートにねじ込む力は強いのが通常です。そのため、バックハンド側ではフォアハンド側よりは、比較的ですがストレートをケアする必要があません。
プロの試合では、バックハンド同士で打ち合っていときに、フォアサイド側が大きく空いているシーンをよく見ますね。これは上記の理由に加えてフォアハンドのリーチがより長いのが主な理由です。
ストローク戦のポジション解説【縦方向の位置】
結論:
上図のように相手と自分の力関係によってベースライン近くにポジションを取るか、ベースライン後方にポジションを取るかを変えます。
理由:
状況の説明:
上図のボールの位置1,2,3は、それぞれ以下の場合です。
1 相手(右側)が追い込まれていて自分に主導権がある場面(aggressive)
2 50:50のラリーが続いている場面(neutral)
3 自分(左側)が追い込まれていて守備的な場面(defensive)
おもな理由:
- ストロークはスウィングするための準備時間が必要だから、相手と一定の距離が必要になる
- 3の場合は、ドロップショットを打たれることもありますが、まずは左右に打つボールに反応すること
レベル別のアドバイス
Step 0
始めたばかりの人、低学年ジュニアなどは、慣れるまでは、センターマーク付近に戻ればよいことにしましょう。
あまり細かいことを最初から教えても上手くできないものです。
Step 1
基本的なポジションを取れるようにしましょう。
- まずは、横のポジションに立てるようにしましょう。
- 次に、状況に合わせてベースラインからどの程度の距離を取るか決めましょう。これはプレースタイルとストロークにスィングの仕方によって個人差があります。
Step 2
自分のプレースタイル、対戦相手のプレースタイルやスウィングからポジションを調整できるようにする。
- 3の状況で、相手の打つボールのバウンドがネットより高く緩いボールなら有効なドロップショットもありますからポジションは図より下げられないかもしれません。
- 相手のチャンスボールの打ち方によりますが、テークバックが大きく振りかぶるタイプなら、ドロップショットのフォームを隠すのは難しいので、上図の3の位置より下がります。
- 3の状況で正しいポジションに入っていてもほぼ確実に決められてしまう場合には、相手にとってリスクの高い方、または打ちにくいと予想する方向のポジションを少し空けます。
- 自身のスウィングがコンパクトなタイプや、反応がいい人、身長が高い人、足が遅い人などはよりベースラインから立つ位置を少し前にします。
- には個人差があります。しかし、基本的な考え方は変わりません。
- フォアハンドでランニングショットが打てる人は、フォアハンド側を少し多めに空けられます。
- 自分のプレースタイルがダブルバックハンドならば、少しバック側を狭く取る。
- 他にも試合中に気がついた工夫をポジションに反映させることに挑戦しましょう。
Coaching
ダブルスについて
この考え方は、シングルスに限らずダブルスでも一緒です。ダブルスでは飛んでくる範囲を半分ずつ守るだけですから。また、ピンチは後ろ目、チャンスは前目に立つというところも同じです。これについては、どこかで詳しく解説します。
よいコーチ / ダメなコーチ
こんなコーチングをしていませんか?
- 放任主義的に本人が気がつくまでアドバイスしないコーチング
- 教える順番が整理されておらず、そのため説明が長く実践時間が短いコーチ
- ポジションについて習得する練習なのに、別のアドバイスがたくさん入ってくるコーチ
アドバイスの仕方について:
- 練習は最初に簡潔に説明して、実践しながら「できた」「できなかた」のフィードバックをできるだけ実践中のその瞬間にしましょう。
- テーマを決めたらそのテーマから外れないようにしましょう。
実績のあるメソッド
ジュニア高学年からはポジションについては、図を用いて教えてました。やるべきことを理解させてその習得に時間をかけるのと、やるべきことに気付くための練習。さてどちらがよいかという選択でした。結果最高スピードは、初めてから2年で全国順位1桁を達成しました。
中学生も高校生も3年間しかありません。「いつか分かる」「たくさん打てば分かる」これではコーチの意味がありません。この場合、タイムリーな情報提供が必要です。その課題を習得するかどうかは本人の問題と考えました。
自分で気付くことも大切ですが、その課題を素早く正確にできるようになっていくことに時間をかけました。